2015年5月26日火曜日

86にゃん

"あー、こんな光景が見れるのなら生き返って本当よかったわ!"

エアルベスさんがケット・シー達の無事を確認するために集めて点呼をしている間。
アイギューンがぐったりしたジュゲムを尻目に、洞窟から出て来たケット・シー達に目を楽しませている。

一方、ライオットをはじめとする冒険者達は、精霊騎士と向かい合っていた。

「コルト家の紋章…あなたは……」

ライオットはなかなか言い出せないのか口ごもっている。
精霊騎士様は苦笑すると口を開いた。

「精霊騎士ユリウス=コルト――このイシュラエア王国に再び来よう日が来るとは。」

えっ、イシュラエア王国の人なの?建国以来って――

「どういう事なのにゃ?」

訊くと、スィルが引き取って教えてくれた。

「ああ、ニャンコは知らなったかしら。ライオットの家、コルト家は世界樹の葉に剣の紋章を持ち、イシュラエア王国建国の頃からの古い家柄よ。ライオットの先祖、エグバート=コルトの弟にあたる人は、世界樹の精霊を味方につけて数々の武功を立てたらしいわ。ただ、ある時を境に世界樹の聖域で行方不明になった――この国の人々は、彼が精霊の世界に行ったのだと語り継いで来たの。」

「ガキの頃から聞かされていたけど……単なる御伽話だと思ってた。」

呆然と精霊騎士を見つめ、泣きそうな声で言うライオット。
サミュエルも本当だったなんて…と呟いている。

「事実は小説よりも奇なりというべきか。ライオット=コルト。会えたことを嬉しく思う。」

ユリウスはそう言って、宙に手を伸ばした。
銀の輝きと共に、そこに一振りの剣が現れる。

「人であった頃に持っていた剣だ――ミスリルで出来ている。そなたに渡そう。」

ライオットは剣を受け取る。キラキラと銀に煌めくそれは、清浄な力を秘めていた。

「では、さらばだ。もう会う事も無いだろう。」

ユリウスは白馬の轡を握って微笑む。
あっと手を伸ばしたライオットだったが。
その時にはもう、精霊騎士の姿は霧と化して消え去ってしまっていた。


***


その後。

王様はマニュエル様とティリオン、エアルベスさんに命じて兵を整えさせ、反乱軍を確認するよう命じていた。
また、職員さんと神殿騎士達は最高神官の指揮の下、大神殿内の検分に向かう。

アイギューンにゾンビドラゴンの儀式を行ったギュンター公爵達も生き返ったと話すと、怒りに目を吊り上げた。

"二度とバカな事を仕出かさないようにやっつけに行かなくっちゃ!そういう人間が今後出て来ないためにも!"

「わたちも一緒に行っていいかにゃ?」

彼女の武勇伝を聞いてしまった私は一応お目付け役を買って出ることにした。

"えっ……しょうがないわね、いいわよ。乗って。"

礼を言ってアイギューンの背――は広すぎるから、頭の上に上り、体を支えるのに丁度良い大きさの棘の所におさまる。
アイギューンが羽ばたき、体を宙に浮かせた時点で冒険者達が気付き、慌ててこちらに駆け出すのが見えた。
間に合わないので、シルフィードにジュゲムへの伝言を頼んでおく。

アイギューン程の巨大なドラゴンともなると、王都から出るなんて朝飯前なことだった。
あっという間に王都を抜け、ギュンター公爵の軍上空である。

決着は瞬く間に付いた。

流石神として崇められていたエンシェントドラゴンなだけあって、彼女は色々な魔法を知っている。
アイギューンは公爵とロドリゲス神官、一派と思われる貴族達、兵士、全てを一瞬で魔法の縄で縛り上げてしまった。
公爵と闇の神官らが居るであろう本陣を、切り取ったように大神殿に転移させる。
他の兵士達はアイギューンの咆哮一つで完全に戦意を無くした。

"これで人間共が何とかするでしょ。"

ジュゲムに乗ってきたライオット達と合流し、そのまま王城に向かう。
占領されていた王城は一度外からアイギューンが脅しただけではだめだった。
しかし一度大神殿に戻り、ライオット達と私を先陣に、兵士や神殿騎士、強化ケット・シー達からなる軍を編成して突入、解放された。

戦いながらもライオット達が投降を呼びかけていたが、分からず屋だらけだったので、腹が立って頭を冷やせと言わんばかりに禁断のハゲ魔法で一気に頭を涼しくしてあげたのだが――それ以降抵抗が弱まったので反乱兵達の心を折ったらしい。

ギュンター公爵やそれに与していた貴族達は牢に入れられた。
後日、王国法に則って裁かれるそうだ。

ロドリゲス神官達は、縛られたまま闇の教皇の元にティリオンが連れて行った。
彼らもまた、それぞれの教会法に基づいて裁きを受けるそうである。

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