2015年4月24日金曜日

11にゃん

「ガキだ!――ガキを狙え!男は殺しても構わん!」

数十人もの粗野な男達が一斉に私達を狙って追いかけて来ていた。
ライオット達が追いかけて行ったのは陽動部隊であったようだ。
木の陰に隠れる私達。
彼は走り続けた所為で息が上がっているが、それでも気付かれぬよう極力静かに呼吸をしている。

「……こちらが本隊だったようですね。ニャンコ、貴女は私が守ります」

心配そうに見上げる私を抱く腕を、魔術師サミュエル=シードはぎゅっと強めた。


***


心配していた崖の道も拍子抜けな程、無事通り過ぎ。
なんだかんだで珍道中で辿りついた先、リュネという街は非常ににぎやかだった。
行きかう人々の多様さ、多さに私は目を丸くする。

「ここは辺境ではありますが、商人が多い宿場なんですよ」とマリーシャさんの言。

なるほど、街のメインストリートには宿屋が軒を連ね、看板娘が宿の特徴を叫びながら道行く旅人を呼び込んでいる。コネコ村とは大違いである。
街を行きかう人々は、自分達と同じでほとんど他所から来たのだろう。
宿に行って荷物を置き、私達は数日の埃を落とすべく風呂屋へ行くことになった。

「イヤにゃ。お風呂はケッコウにゃっ!」

ところがどうして、元来風呂好きだったはずの私は目下女湯を逃げ回っていた。
外見こそは幻を着せられて普通の人間の幼女だが、如何せんずぶ濡れで肌に張り付く毛の感触は変わらない。
猫がお風呂嫌いなのも頷ける。

「こらっ、ちゃんと綺麗にしないとダメでしょう?」

スィルに追い掛け回される。マリーシャは困ったような顔をしていた。
苔が生えたタイルに滑ったところをスィルに捕獲されてしまう。

「ニャンコ、ちょっとの間ですから大人しくしていてね」

ざばー。

スィルの腕の中、マリーシャにお湯を掛けられ、そのまま石鹸でごしごしと洗われる。

「ぎゃーっ、にゃああああああああっっっ!!!」

幻じゃなくて本当に人間に変身させてもらえたら良かったのに!



***



「――ぷふっ、あっちは賑やかだな」

「あんなに悲鳴を上げずとも……」

隣の女湯から聞こえるニャンコの悲鳴に苦笑しながら、ライオットとサミュエルはお湯を愉しんでいた。

「あの可愛い猫の子かい?猫科の獣人は風呂が苦手だからなぁ」

風呂屋の入り口で一緒になった男が声を掛けて来た。

「あんた達冒険者かい?あんな小さい子供を連れているが……」

「ああ、私達はあの子の護衛依頼を受けているのですよ」

いぶかしんだ男にサミュエルが会釈しながら説明する。

「そうか。なら、この町にいる間は気を付けた方がいい。ここのところ物騒でね――」

「――人攫い?」

男が語ったところによると、数日前から街の路地裏にたむろしている孤児達が居なくなったらしい。
孤児達に支援の手を差し伸べている教会のシスター達が血相を変えて探していたものの、孤児のことである。
居なくなったとしても捜索するメリットも無く、街の役所や自警団に届けられはしたが結局迷宮入りになったという事だった。

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