2015年4月24日金曜日

35にゃん

「宮廷で流行ってようが巷でそんな格好をしたらいい笑いものだな。」

ライオットが投げやりに言う。
こんな珍獣が多く居るのなら、宮廷とやらをちょっと覗いてみたくなった。

「それは僕に対する僻みかい~?スィル~。君はこんな僻みっぽい男の所に同情心から居るなんて優しいんだね~。でも~、そこは君が本当に居るべき所ではないよ~。僕の所に来たら~、麗しいエルフの君なら他の女たちよりも特別扱いしてあげるよ~。」

「前にも言ったでしょう?お・こ・と・わ・り・よ!」

「僕の彼女らに嫉妬してるのかい~?素直になればいいのに~。」

ヒュペルトは肩をすくめてやれやれとしてみせた。
スィルが疲れたように溜息を吐いている。

うーん、こんな調子でヒュペルト様に付き合っていたら時間が無くなるな。
話が通じてない上、この間延びした喋り方にちょっとイライラしてきた。

「わたち、早く帰ってお守り作りたいにゃー。」

「そうね、用事はもう終わったし行きましょう!」

私の出した助け舟にスィルが即座に反応する。
暗黙の了解で一同踵を返そうとした時。

「貴族である僕の話を遮るとは無粋な猫獣人だね~。そいつは奴隷かい~?なら、」

「『ヒュペルトはぎっくり腰になる』にゃ。」

ぐきり。

「躾がっ…がががっ……!!?」

ヒュペルトは全てを言う前に崩れ落ちた。
レイピアの鞘の先が地面に接触した時に男として大事なものをギュッと打ち付けて圧迫したらしく、白目になって泡を吹いている。

「にゃー?おじしゃん、いきなりどうしたのかにゃー?」

ライオット、サミュエル、ギルド内の男性は青褪めて股間を押さえている。
戸惑う皆を尻目に、私は努めて純粋な表情を作り、不思議そうに首を傾げた。

"きゃっはっはっはっ、ニャンコナイス!"

"こやつは精霊の間でも嫌われ者ですじゃー!ニャンコグッジョブですじゃー!"

地の精霊は色々と感覚が麻痺してきているようだ!




***



夕方。

私は裁縫道具と筆記道具を借り、今日買ったお守りの材料と共に箱に閉じこもった。
猫目は僅かな光でもよく見えるから素晴らしい。

羊皮紙にお守りの目的を日本語で書いて、縫ったお守り袋に封入する、それだけのものだ。
幸い裁縫は得意な方だったし、お守り袋程度なら簡単に縫える。

何も書かれていない羊皮紙を見詰めて、何を書こうかじっと考える。

彼らは危険と隣り合わせの冒険者だから、命を守るとか、そんな効果がいい。

「ゲームを参考にするなら、即死攻撃を受けた時に砕け散って身代わりになる効果、とかかにゃー?」

でも、それじゃあ一回こっきり、肝心の敵が健在ならどうしようもない。
また即死攻撃を受ければ死んでしまう。

私はうんうん脳みそを絞りながら散々悩んだ末、ある文面を書き記した。
袋に入れて綴じ、完成である。

万が一、彼らがお守り袋を開けてみたら困るので、文面をサミュエルに貰った【旅守】に見えるように幻影を纏わせる。
そうすれば既製品を真似して作ってくれたんだなぁと勘違いしてくれるだろうから。

綺麗に出来たお守りを並べてみて、私は満足して鼻を擦る。
ちなみにお守りは日本式に縫っておいた。


――願わくば、このお守りが必要になる事態が訪れませんように。


その後、彼らにお守りを渡しに行くと、大爆笑された。
ライオットの剣で顔を見せてもらうと、鼻の周りが真っ黒!
身体も所々墨で汚れている。

夕食は領主のお招きなので、身奇麗にしなければ、という事でマリーシャ・スィルによってお風呂屋に強制連行。
体全体をゴシゴシ洗われる苦行再来、ぎにゃー。

不幸中の幸いとしては、お守り袋そのものはあんまり汚れてませんでした。
皆喜んでくれて、良かった良かった。

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