2015年4月24日金曜日

31にゃん

「光の神イーラよ、裁きの矢を下したまええええっ!」

マリーシャの気合の入りまくった祈りに無数の光の矢が現れ、山賊達を的確に射抜いていく。
特に股間を集中して狙っているのは気のせいだと思いたい。
射抜かれた山賊は事切れたように動かなくなるが、死んではいない。
気絶しただけだ。

「普通、光の神への祈りは癒しや補助のみで攻撃性は無かった筈なのですが……。」

「ああ、俺もそう聞いていた…。」

明らかに怯えの入った声。
見ると、サミュエルとティリオンが小刻みに震えながら青褪めている。

お前らはまだマシだよ。
誰よりも恐ろしさを感じているのは、馬上のマリーシャの前に抱えられるように座っている私なのだから。
背後の体感温度が半端なく冷たい…ブルブル。

普段温和な人が怒ると怖いとは言うが、これは怖いなんてもんじゃない。
そんなチャチなもんじゃあ 断じてない。
もっと恐ろしいものの片鱗を――現在進行形で味わっている最中だ。



***



あの後。

サミュエルを起こした私は、ティリオンに警戒する彼に「ティリオンが助けてくれたのだ」と説明した。
怪我が完全治癒している事に関してはたまたまティリオンが持っていた薬の効果だと伝える。
一応、安くはないもののそういう薬は存在するらしくて、サミュエルはひとまず納得したようだった。

風の精霊がやってきて、マリーシャ達自警団の居場所を教えてくれたので、地の精霊で転移する。
サミュエルと私の無事を喜んで涙を流していた彼女だったが――。

睦みあう山賊達の痴態。

それを見た彼女は小刻みに震えていたが、やがてうふふあははと不気味な笑いを浮かべだして今に至る。

「汚物は徹底的に消毒しなければ――さあ、皆さん。児童誘拐犯達を縛り上げて下さいな。」

マリーシャの背後に、某世紀末救世主漫画に出てくるモヒカンの幻影が!

彼女は自警団の面々を振り返って、にっこりと聖女の笑みを浮かべる。
だが、目が笑っていない…まるでゴキブリを見るような冷酷な光を湛えている。

自警団達は人形のようにコクコクと頷いて仕事に取り掛かり始める。
彼女に逆らってはいけない――そんな空気がここにあった。

"マリーシャは箱入り育ちで潔癖症なのよねー。それがいきなりレベル高いのを見てしまって色々突き抜けたのよ、きっとー。"

"怒るとニャンコよりも恐ろしいですじゃ……"

いつの間にか来ていたシルフィードとノームが語り合う。
相性が悪いと言っていたが、この恐怖に関しては同意見らしい。

「ふふふ、これこそが光の神イーラの授けたもう新たなる力…ああ、山賊はまだライオット達の所にもいるのでしたか。ティリオンさん、お願いしますね?」

「あ…ああ。地の精霊王ノームよ!」

一同、恍惚とするマリーシャに怯えながらライオット達のいる場所へ転移をする。
ライオットは私達の姿を見るなり必死の形相でこちらへ走ってくる。
後ろには数人の、裸でぶら下げて追ってくる山賊。
マリーシャの容赦ない攻撃の祈りが繰り出され、彼らは沈んだ。

「マリーシャ…た、助かったああああ!」

ライオットは男泣きをしながら倒れこむ。
大分服が破られ、脱がされていたが何とか貞操だけは無事だったようである。

「マリーシャ、ありがとう。あいつら、眠りも風の精霊の攻撃も関係なく止まらないんだもの…それに無防備な相手に弓を使うわけにもいかないし。」

スィルが木から飛び降りて来た。顔を赤らめながら溜息を吐く。

"ロドリゲスとかいうハゲちゃびんは散ったわ……"

ライオットが必死に逃げる最中、ふらふらになった奴を捕まえて、自分を追う山賊達に向かって身代わりに突き飛ばしたらしい。
シルフィードが尊い犠牲ね…と涙を拭う仕草をした。

私は自分の言った日本語じゅもんの文句を脳裏でよく思い出してみる。あらー。
怒りに任せて山賊達に魔法をかけた事でライオット達を巻き込んでしまって、ちょっぴり反省。

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