2015年4月25日土曜日

43にゃん

私はまず世界樹の畑の結界を確認する事にした。
冒険者達とお茶を飲んだあの二階に戻って呪文を唱える。

「『世界樹の畑の結界はシャボン玉の膜に見えるようになる』にゃ。」

畑の方を見ると、ぼわわんと大きな虹色の膜が出現する。

「にゃっ!?大きいにゃー!」

思った以上の大きさに驚いてしまった。
広い畑をすっぽりと巨大なシャボン玉が覆ってしまっている。
私は二階から降りて、結界の壁に近づいてみた。


***


結界の壁に手を差し入れてみる。普通にすっと通る。
けれども、精霊達は通れないようで、何度も結界の壁にぶつかっては押し戻されていた。

"やっぱ通れない。物質だけしか通さないようになってるのねー。"

"中に入ったらどうなるか…ちょっと怖い気がするな。"

"ニャンコ、わしらは一度精霊石の中に隠れるから、結界の中に入ってまた呼び出してみて欲しいですじゃー。"

「分かったにゃ。」

ノームの提案を実行してみる。
結界の中に入って三精霊王を呼び出してみると、問題なかったようだ。
シルフィードはキョロキョロと周りを見ている。

"ここが結界の中ねー。んー、風の精霊はいないわねー。でも、魔素があるー?"

"地の精霊も居ないですじゃー。しかし水の精霊がおりましたですじゃー。"

"…水の精霊だけいるってことか。なら、魔素は水の精霊がどうやってか運んでるってこったな。"

サラマンダーが思案げに呟いた時。

"おかしいですわ。結界が張られている筈なのに、他の属性の気配が致します。けれども懐かしい気配……一つだけは憎たらしいあん畜生のものですけれども。"

お嬢様口調の、青白い精霊が現れた。


***


彼女は流れるような髪、魚の鰓のような耳、これまた魚の下半身を持つ、そんな姿をしている。

"やっほー、久しぶりー!"

"暫くぶりですじゃー。"

"……やはりお前か、ウンディーネ。"

精霊達は次々に挨拶をする。どうも水の精霊王のようだ。
彼女は驚いたようにバンザイポーズを取る。

"まあまあ、シルフィードにノーム……そしてあん畜生ではありませんか。何故皆ここに…結界をどうやって越えたのかしら?"

あん畜生、の所でトーンが憎憎しさを帯びて低くなっていた。
火と水だから、風と地のように仲が良くないんだろうな。

"おい、こら、てめーこそ何でここに居んだよ!"

"おお、怖い。粗野な精霊ですこと。私は魔素を大量に含む水を運んできて、世界樹の面倒を見ているんですのよ。結界は水路の部分だけ穴が開けられておりますの。"

ウンディーネの言葉に、私は畑の周囲を見渡した。
水の通り道であろう、レンガを隙間無く組み合わせて作られたような水道管が結界の外から伸びてきている。
水道管のあるところは畑のある土地より一段と高くなっており、結界を少し越えたところで水を放出している。
その水は下の貯水池に注がれ、そこから水路が畑へ向かって伸びていた。

"あー、ウンディーネ転移出来たもんねー。"

"成る程のう、その方法なら水の精霊だけでも世界樹を育てられますじゃー。"

という事は、世界樹の畑は全て水の精霊の賜物ってことか。
納得していると、

"最初はしんどかったですわ。でも、最近は楽になりましたの。私、魔族領から水を持ってきているのですけれど、水浴び中のドラゴンを捕らえて地下に閉じ込めてからは魔素が以前より少なくて済むようになりましたもの。"

ウンディーネはあっさりとそうのたまった。
え?ドラゴン、いきなり見つかっちゃったんだけど。

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