2015年4月24日金曜日

21にゃん

どうせなら一緒に見ようよー、とのシルフィードの言葉に甘えることにする。
シルフィードが現地にいる風の妖精から映像を受け取り、それを私と共有するそうだ。

目を閉じると、ハイビジョン、まるで目の前で起こっているかのように映像と音声が伝わってくる。
いつの間にか戦端が開かれていたらしく、彼らは戦い始めていた。

篝火が焚かれている洞窟周辺以外は余りにも暗いので、赤外線カメラで見るような視覚の魔法を使う。
マリーシャは子供達の傍の明るい場所に陣取っており、懸命に祈りを捧げている。光る膜のようなものが子供達全体を覆っている事から、それがバリアのようなものだと見て取れた。

ライオットとスィルは剣と弓で暗がりの中で敵をバンバン狙い撃ちしている。
頭上のしるしをやればいいのだから、敵にとってはひとたまりも無いだろう。

聞こえてくる音声から判断するに、どうやらスィルが眠りの妖精を使役したようだが、山賊もしたたかで、今戦っている敵は全員なんらかの護符を持っているらしい。

サミュエルはと言えば、例のスキンヘッドの黒ずくめの男と対峙していた。

――ワタシテキタオスホノオホシイデス!

とサミュエルが唱えて火球を放ったかと思えば、

――ワタシテキタオスミズホシイデス!

とスキンヘッドが唱え、水でそれを打ち消す。
両者とも真剣な表情でゼェゼェしながら魔術合戦をしている。

口元が怪しくなりながら私は必死に自分に言い聞かせた。
シュールであるが、これは命の取り合い、命の取り合いなのである。大事な事なので二回言いました。

"ニャンコ、あれは闇の神の神官よ"

"原理主義者っていうやつですね。"

"内部分裂で穏健派に敗れてこの国にやってきたらしいわ"

シルフィードと、いつの間に遠隔視に参加したのか風の妖精達が色々情報を教えてくれる。
うーん、山賊側の人数の方が多かったのだけれども、彼らだけで片が付きそうではあるなぁ。

"子供達を攫ったのは兵士として育てるためみたい、それと――"

私の出る幕はないかな、と思った、その時だった。


***


「――そこまでだ!」

ライオットは高々と宣言する。
山賊の男達を全て倒し、残るは件の闇の神官一人になった。
サミュエルとの魔術合戦では拮抗を保っていたようだったが、多勢に無勢、スィルの弓が闇神官の腕に突き刺さる。
膝を突いた闇神官が窮地に冒険者達を睨みつけた…頭上に『児童誘拐犯』の赤い文字を浮かばせたままで。

「攫われた子供達は全員返してもらうわ。」

「グルタニア帝国の闇の神官が、この国で何を企んでいるのか――全て話して頂きますよ。」

スィルとサミュエルが追及した、その時である。



オオオー………ン



不気味な声が、崖山に響いた。

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