2015年4月24日金曜日

14にゃん

酒場も混雑の時を過ぎ、居るのはライオット達だけになっていた。
厨房で食器を洗い片付ける音が響く。

皆、何を話す訳でもなく。
テーブルの果実酒の杯を眺めながら、ただ押し黙っていた。
ニャンコの放った言葉が心に突き刺さっていたからである。
ニャンコを先に寝かせるべく部屋に連れて行っていたマリーシャが、階段を下りて戻ってきた。
ライオットはそこで初めて顔を上げ、幼馴染の魔術師サミュエルを見詰めた。

「……なあ、サミュ。駆け出しの頃、お前は当代一の魔術師、俺は英雄になろうって言ってたよな。」

「ええ、そうですね。『家の財産を継げこそはしないが、その分好き勝手できる』と、気楽な次男坊の貴方は、私の友となり夢を語ってくれたのが懐かしい。私もまた、貴方の夢に突き動かされるようにして夢を持ちました。」

「お前、まだその夢を捨てて無いだろうな?――ニャンコの言葉に気付いた。金にもならない厄介事があれば逃げるのは、結局普通の冒険者止まり。到底英雄にはなれん。」

サミュエルはにやりと笑った。

「――偶然ですね、私もそう思っていたところですよ。保身ばかり考えて逃げているばかりでは行き着く先も自ずと知れるものですから。」

そんなやりとりに、マリーシャは涙ぐんだ。

「二人とも…これも光の神イーラのお導きなのでしょう。本当に、ありがとうございます。」

そこへ、パンパンとスィルが手を叩く。

「ちょっと、私もいる事忘れないで。正直、こういう事件がある度に『人間はこれだから』って思うけど、貴方達のような人がいるから人間を嫌いになれないのよね。」

「手伝ってくれるか、スィル?」

ライオットの問いに、エルフは柔らかな笑みを浮かべて答えた。

「勿論よ。」


***


客のすっかり居なくなった酒場。

宿の主は彼らが子供達を探す事を決めたと聞くと、営業時間を過ぎていたにも関わらず、好きなだけここを使ってくれと言って下がっている。

冒険者達が捜索方針について話し合っていると、階段からカタン、と物音がした。
彼らの視線の先、部屋に居る筈のニャンコが階段の上に立っているのが見えた。

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