2015年4月24日金曜日

5にゃん

「先程の続きだけれども、ニャンコ。悪い人達に捕まっていたの?」

スィルの問いかけ。
名前に関しては諦めた。気を取り直して身の上設定を考え考え話す。

「にゃー…そうなのにゃ。ずっと悪い人達に捕まって…檻の中に入れられていたけど、悪い人達をやっつける人が来て……それで、悪い人達に変な魔法をかけられたのにゃ。気がついたらこの森の中に居たのにゃー…。」

つっかえつっかえ話す様子に、気遣わしげな視線を浴びてちょっと良心が痛んだ。
なるほど、とサミュエルが私の言葉を引き取って解釈する。

「大方、ニャンコを捕まえていた盗賊か何かが冒険者に踏み込まれたと。それで希少なケット・シーを渡したくなかった盗賊は転移の魔法をニャンコにかけた――転移の魔法はとっさの時には暴走するものですから、ニャンコは無作為にここに飛ばされてきたのでしょうね。」

さすが魔術師、足りなかったところまで勝手に補足してくれてありがとう――とホッとする間も無く、話は私の身の振り方に移った。剣士ライオットが腕を組んで思案している。

「で、どうする?保護を受けるべき種族なら、このまま置いておく訳にもいかないんだろ?」

「ニャンコは一人では生きられないわ…どこかに保護を頼まないと。またよからぬ輩に捕まるのがオチだわ。」

スィルが言うと、サミュエルが同意した。

「そうですね。ギルドで手紙を出して、ニャンコを保護してもらいましょう。」

――それは困る!

「やっ、嫌にゃ!!一緒に行くのはダメなのかにゃ?ニャンコはマリーシャしゃん達と一緒がいいにゃ。他の知らない人は、怖いにゃ。」

「俺達と一緒が良いって言われても…危険だぞ。」

「ニャンコを守りながら旅するのは難しいと思いますが…。」

渋る剣士と魔術師。
救いを求めるようにマリーシャを見ると、それまで黙って考え込んでいた様子の彼女は意外にも彼らの意見を否定した。

「確かにニャンコを私達が連れまわすのは難しいとは思います。しかし…ギルドから手紙を出してニャンコを村の人達に託したとしても、迎えが来るまで無事であるとは限りません。どこかでケット・シーの噂を聞きつけたよからぬ輩が徒党を組んでニャンコを奪いにこの村へ来れば本末転倒ではないでしょうか。本人も希望している事ですし、それならいっそ共に保護区まで私達が連れて行ったほうが良いと思います。」

「でも…ニャンコはまともに戦えないのよ?」

言い募るエルフに、神官は祈りの作法らしき事をした。

「これも光の神イーラのお導きなのでしょう。人を癒す神聖術こそは使えますが、まともに戦えないという点では私もニャンコと同じですよ。」

マリーシャの言葉にうっ…と言葉に詰まる面々。
宗教はあんま信じないけど、理屈をすっ飛ばしてくれて光の神イーラ様ありがとう。
思わず笑顔で万歳してしまった私を見て微笑むと、マリーシャはしゃがんで目線を合わせてきた。

「ニャンコ、あなたは同じケット・シーの居る場所まで連れて行く旅の間、私の傍を離れないと約束出来ますか?」

「にゃっ、約束するにゃ!」

私はビッと敬礼して元気良く返事をした。
マリーシャは良い子ですね、と一撫でして立ち上がる。
ポリポリ、と頬を掻きながらライオットがぼやいた。

「あーあ、どうするかな。大フォレストワーム討伐の依頼…。」

「ニャンコ、実は私達は一週間馬車を飛ばし続けてこのコネコ村まで大フォレストワームの退治に来たのよ。」

大フォレストワーム。大森林芋虫。
調子に乗ったときに倒してしまったアレじゃないよね?

「大フォレストワームって何にゃ?」

確認も兼ねてライオットに訊いてみる。

「簡単に言えば、見た目でっかい芋虫の恐ろしい怪物だ。水場近くを好み、森を荒らして生き物を食う。勿論、人間もな。動きは緩慢だが、ヤツの出す毒液や粘液糸が厄介だ。森の道は川沿いだからこの村にもやって来るかも知れない。そうならない前に俺達が倒すのさ。」

村が襲われる前に何とか間に合って良かったよ、と剣士は笑う。

「こ、怖いにゃー、その、大フォレストワームはたくさんいるのかにゃ?」

「いや、目撃報告では一体だけだ。そもそも大フォレストワームは森の遥か奥に生息していて、草原近くにはめったに来ない。」

「……。」

私は二の句が告げなくなった。
やっぱりか。
ごめんなさい。それ、多分倒してしまいました。

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