2015年4月25日土曜日

45にゃん

トラ、三毛、クロ、サバトラ…色んなケット・シーがいるものだ。
数百対の瞳が私に突き刺さる。
夕食時――私は大勢のケット・シー達が並ぶ食堂で、エアルベスさんにより紹介をされていた。

「今日からこの施設の新しい仲間になった、ニャンコ=コネコさんです。皆さん、仲良くしてあげてくださいね。」

水の愛し子がエアルベスさんだと聞いてすぐ夕食の鐘がなってしまったので、そこで一時中断となった。
ウンディーネが道を教えてくれたので、食堂まですんなり来れたのは良かったと思う。

「ニャンコ=コネコですにゃ。よろしくお願いしますにゃ。」

ぺこりと頭を下げる。
ケット・シー達からパチパチと拍手が起こった。

「今日は新しい仲間が増えたお祝いに、デザートにケーキが出ます。」

エアルベスさんがそう言うなり、ざわめきが起こる。

「にゃっ!ケーキ!!!」

「やったにゃー!嬉しいにゃっ!」

「ニャンコのおかげにゃー!」

どうやらケット・シー達にとって、ケーキは特別なものであるようだ。

「ここがニャンコの席です。」

案内されたのは隅っこの席である。
隣には俗に言うハチワレの、斜め前にはサバトラの耳が垂れたケット・シーが居た。

「かわいいこねこにゃん、ぼくはハチクロにゃ。しばらくキミのお世話をすることになったからよろしくにゃ!」

ハチワレがスッと手を差し出してきた。
「かわいいこねこにゃん」に一瞬、は?と思うものの、握手に応じる。
すると、斜め前のサバトラが「おいおい、ヌケガケかにゃー?」と頬杖をついて流し目をしてきた。

「ニャンコと言ったっけにゃ?カワイイ名前だにゃ…おれはタレミミにゃ。世界樹の葉摘みでは誰にも負けたことがないにゃ!仲良くして欲しいにゃー。」

お、おう…。
そういえばおかわりの時呼ばれていたな。

ふっと前髪をかき上げる仕草をするタレミミ。勿論前髪はない。
この自信満々の様子…ケット・シーの間では彼はイケメンかもしれないが、いかんせん私はケット・シーの美醜がさっぱり分からない。
よくわからない冷や汗をかきながら「よろしくお願いしますにゃ。」と言うので精一杯である。

とりあえずスルーしてご飯を食べていると、ふと明かりが翳った。
気配に顔を上げると、フリフリの服を着た白いペルシャ猫タイプのもっふもっふのケット・シーが、後ろに数人引き連れて立っている。

「わたくちはミミといいましゅのにゃ。あにゃた、言っておくけどタレミミしゃまはわたくちのヒアンセなのにゃっ!イロメをちゅかわないでほちいにゃっ!」

ビシッと指差された一方的な宣言に、後ろのケット・シー達もそーにゃそーにゃと同意する。

ああ、女の子だったんだ。
ケット・シーの性別は股間でも見ない限り良く分からん。
それにしても、ヒアンセ…フィアンセか。

「ミミ…おれにはよりおおくの花をめでるギムがあるのにゃ…」

「しょんな…タレミミしゃま……」

「――タレミミ。ヒアンセがいるのにほかの子にイロメを使うにゃんて関心しにゃいにゃ。ニャンコにゃん、こんな奴ほうっておくにゃ。」

「おまえらは何のコシバイをしているのにゃ?」

思わずつっこんでしまった。
一体私は何に巻き込まれているのだろう。

神はこのケット・シーの楽園で、元人間の私にケット・シー相手の乙女ゲーをプレイしろとでも言っているのだろうか?
種族的には正しいかも知れないが、精神的には無理ゲーである。
ケット・シーをかわいいとは思っても、素敵だとトキメキはしない。一体誰得なのだろう?
せめて人間バージョンイラストが欲しい。
ミミはさしずめ典型的な悪役令嬢か…。攻略対象?は何人いるのだろう。

彼らの会話を聞き続ける事を耳が拒絶したので、黙々とご飯を再会する。
ミミが私に何か捲し立てていたようだが、そうこうする内に彼女のご飯が他のケット・シーに奪われてしまったらしく。
ミミは悲鳴を上げながら「今日はこれぐらいでカンベンしてあげましゅにゃっ!」と言い捨てて戻って行った。
ほとんどを聞き流してしまったが、何かのフラグを回収してしまったのだろうか。
個人的にはミミ友情エンドが無難かもしれない。

……というか、ここにいる限り、いつかはケット・シー同士で結婚しなきゃいけないのかな?
ケット・シーが絶滅危惧種なら、増やそうって思われてるよね、絶対。
私は今更ながら、今更な事に気付いて青くなってしまった。

いやー、ないわ。無理無理。

エアルベスさんには悪いけど、ドラゴンを無事に返したら脱走したい。
出来ればまたライオット達のところへ戻りたい。
そうなったらまた迷惑かけるけど無理なものは無理!
私は愛されマスコットのような存在でいたいんだ!

しかし脱走するにしても、あまり迷惑が掛からない、すべて丸く収まるような方法を考えなきゃなぁ……。

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