2015年4月24日金曜日

26にゃん

「は…離してちょーらいにゃっ!」

今、凄くオシッコに行きたくなっているであろうティリオン。
彼が解放してくれる事を期待してジタバタしてみる。
しかし予想に反して彼は首根っこを掴む手を強めて離してくれない。あれ?
ライオットが剣を構えた。

「お前…何が目的だ?そもそもピンポイントでニャンコを地の精霊術で攫ったのは何故だ。」

「こいつが遠見の術でここを見ていたからだ。魔狼が中毒を起こしたのも、こいつが関わっている可能性が高い。」

あ、やっぱりバレてたのね。アンシェラ様、後が怖いけど、お名前を借ります…。

「――ちっ違うにゃっ!アンシェラしゃんっていう人がお部屋に来て見せてくれて、わたちはそれを一緒に見てただけにゃっ!オオカミしゃんをコラシメたのはわたちだけど…コラシメのオマジナイはアンシェラしゃんが教えてくれたのにゃっ!」

「アンシェラ様!?闇の神が何故闇の信徒でもないお前のような獣人の子供の前に現れるのじゃ、戯言を言うな!!」

「でも確かにアンシェラしゃんと言ったのにゃ。髪の毛と目が黒い綺麗な人なのにゃ!おじしゃんの事はあまり好きじゃないって言ってたにゃ!マリーシャしゃん達を助けたのはアンシェラしゃんにゃ!」

「えっ…ニャンコ、マリーシャ達はどこなのです!?」

「大丈夫にゃ、サミュエルしゃん。街の教会に無事でいると思うにゃっ!」

忙しい時に限って用事が舞い込む。
時間が無い、切羽詰った時に限って時間は延びる。
そんな嫌なマーフィーの法則はこの世界にも息づいているようだ。
時間が経つにつれ、ティリオンの腕が震えだした。
ぶら下げられている私にも伝わってくる。

「なっ何を馬鹿な、闇の神が光の神官を助ける筈は無いじゃろ!あれはアンシェラ様がわしに力を――」

「 ロ ド リ ゲ ス 神 官 !!!」

ティリオンがドスの利いた声で遮った。ロドリゲスはその気迫に怯んでいる。
何で我慢するんだろう?早く離して欲しい。膀胱炎になるよ?

「…いいから早く武器を捨てろ。」

「どうせ武器を捨てた所でニャンコも私達も殺すつもりでしょ?ふざけないで!」

「そんな事はせん。いいから早く武器を捨てろと言っている!」

「ならニャンコを離しなさい。まだ小さい子供を人質にとって恥ずかしくないのですか?誇り高いダークエルフが!」

スィルやサミュエルは私に危害が及ばぬよう、そして穏便に取り戻せるようこちらを伺いながら時間を稼いでいるようだった。

"そうそう、魔術師の言うとおりエルフは白黒問わず滅茶苦茶誇り高いのー。ドシリアスな場面で人前でお漏らしなんてしたら自殺モノよー?たとえ相手がクールイケメンであっても容赦ないなんて流石はニャンコねー♪やっぱカワイイこそが正義だわー!"

我慢せずに解放してくれればトイレに行けるのに、そうしないのはダークエルフのプライドがあるからだろうか?でも、プライドがあるなら普通人質よりもトイレを選ばないかなぁ?

"うわっ、スッゴイ形相で我慢してる!こんな風にー"

シルフィードは壮絶な表情を浮かべ、足を交差クロスしてプルプルしてみせた。
うわっ、確かにスッゴイ我慢態勢だ。

"脂汗まで浮かべて必死ねー"

きゃーっはっはっは♪と笑い転げるシルフィード。
周囲の風の精霊達は一斉に"そーれ、も・ら・せ!も・ら・せ!…"と手拍子付きで囃し立てている。

"おのれシルフィードッ!!――愛し子おおお、早くニャンコを離すんじゃあああ!転移の用意は出来ているのじゃあああ――っ"

…ティリオンに精霊の声が聞こえなくて本当に良かった。

「フン、所詮はダークエルフね。子供を盾にしないとまともに戦えないなんて。」

スィルの軽蔑を込めた声。
それが、限界だったのだろう。

「クッ…クッソオオオオオ――ッッ!!!」

"愛し子、よくぞ決断したのじゃああ!!!"

ティリオンが切羽詰った様子で憤怒の叫ぶを上げると同時に、私の視界がぐるりと回転した。
投げられている、と思った次の瞬間、ライオットに受け止められていた。

「ニャンコ、大丈夫か!?」

「だ、大丈夫にゃっ…」

ダークエルフが居た場所は、と見ると、そこは泥が渦巻いているだけだった。
致すまでにギリギリ間に合ったのだろうか。そんな事を考えていると、ライオットが私を地面にゆっくりと下ろす。
そして、闇の神官ロドリゲスに剣の切っ先を突きつけた。

「――ダークエルフは逃げた。後は雑魚とお前だけだから覚悟しろ。」



*おまけ*

したいときにできる、それは何と素晴らしい事か。byティリオン

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