2015年4月24日金曜日

34にゃん

クラウロアの街は、大きかった。
市場も規模が大きくて、色々な商店露天が軒を連ねている。
何を買おうと思いながら、色々お店を冷やかしながらみんなと歩く。

「ニャンコは何が欲しいの?」

スィルに訊かれて、私ははた、と思い悩んだ。
ライオット達との思い出作りなんだし、折角なら何か記念になるようなものがいい。
はたと思い当たってポケットを探る。
サミュエルがあの時入れてくれた――そうだ、お守りなら。
私は彼らの為にお守りを作ろうと思い立った。

「みんなのためにお守りを作りたいにゃ!だから、お守りの材料が欲しいにゃ!」

「ニャンコ、ありがとうな!」

「お守りの材料と言えば筆記道具、羊皮紙もしくは板切れ、布といったところでしょうか。」

「筆記道具は私が持っています。羊皮紙は高いですが、お守りの大きさ程度の端切れなら子供のお小遣いでも買えるでしょう。」

「裁縫道具なら荷物の中にあったな。」

羊皮紙を扱うお店と布屋を回り、ハギレを安く買ってもらう。
とびっきりのお守りを作ろう。


***


買い物を済ませ、お昼に名物料理を堪能した後。
ライオットが冒険者ギルドに用事があるというので、寄る事になった。
ライオットは私の背を押してカウンターに座らせる。

「これはコルトさん。皆様お揃いで如何致しましたか?」

「やあ、サラ。今日はこの子の登録をお願いするよ。身分証を作りたくて。」

「それは構いませんが…15歳を超えるまでは依頼をお受けする事はできませんよ?」

「ああ、分かってる。」

私はライオットを見た。
受付のお姉さんは羊皮紙を綴じた帳面を持ってくる。
お姉さんが質問すると、ライオットが私の名前や年齢を適当に答えていった。

「この子の保証人は俺――それで、ニャンコを俺達【世界樹の葉】の一員に入れる。」

お姉さんがいいのですか、と聞くと、冒険者達は頷いた。
カウンターの後ろにいた、眼鏡を掛けたドワーフのようなおじいさんが金属片を取り出し、ハンマーと金型で打刻していく。

「ニャンコ、ほら。」

鎖をつけられ出来上がったプレートは、首から下げられるようになっている。
受け取ってマジマジと見つめるものの、字が読めない。
シルフィードがそれを察して覗き込んでくれた。

"なになに、「ニャンコ=コネコ、3歳、女、所属:世界樹の葉」って書いてあるわー。"

「ニャンコはずっと俺達の仲間だ――そのギルド証明は、保護区に行っても大事にしてくれよ?」

ライオット…私は感謝で胸がいっぱいになった。
貰っていいの?こんなに嬉しい贈り物はないよ!

「大事にするにゃ!みんな、ありが…」

「ちょっとくらいいいじゃないか~キャスリ~ン!」

「やめてください!今勤務中なんです!」

とうにゃ、と続けようとした言葉は、能天気で空気を読まない第三者によって見事に妨害された。


***


ぴきっ。

頭の静脈が浮き出るような思いでそちらを見遣る。
スィルの声だろうか、ゲッという呻き声が聞こえた。

そこに居たのは上半身装飾ごてごてひらひらの、モーツァルトのようなカール頭をした男だった。
そいつは3つ隣のカウンターの、可愛い受付のお姉さんの手を引っ張っている。
周囲にはタイプの違う美人な冒険者を五、六人侍らせているが、しかし彼女らは男の行為を止める訳でもなくただ見ているだけだ。

「最悪ね…こいつもこの街に居たなんて…」

「同感だ…正直このタイミングでは会いたくなかったぜ…」

スィルとライオットがげんなりしたように呟く。
どうやら顔見知りであるようだ。

「僕はヒュペルト、未来の勇者さ~。君が僕を呼ぶときはヒューと呼んでくれたまえ~。」

「ヒュペルトって言えば、ギュンター公爵家の……」

私の登録をしてくれたサラさんが呟く。
それが耳に入ったのか、ヒュベルトはこっちを向いた。
その隙にキャスリーンさんはシュバッと手を引っ込めて奥に逃げる。

「おや~?そこにいるのは貧乏騎士爵コルト家の三男坊ライオット君じゃないか~。相変わらず貧相だね~。」

「お前も相変わらず女漁りばかりで未だ剣も碌に振れないようだな。勇者ごっこをやめて家に帰ったらどうだ?」

「ふっ…いくら僕が優雅で美しいからって、モテない男の僻みは困るね~。」

何か濃いキャラの未来の勇者キター。

ヒュペルトは手の甲を額に当ててポーズを取り、クックックッ…と笑う。
まるで自分が格好良すぎて参ったな、的な…。
誰がどう見てもアクの強い嫌なヤツキャラ…。
しかも、ライオットの嫌味も通じていない…なんというポジティブ思考!

凄い。こんなの本当にいるんだな。

私は絶滅したと思われた生き物が目の前に現れたかのような視線を奴に向けた。
というか、さっきから気になっているんだけど。

何故レイピアを股間に挟む形でぶら下げているんだろう?

奴の下半身は男性バレエダンサーが着用するようなピッチリもっこりしたタイツである。
鞘と大事な所が擦れたりしないんだろうか?
気 に な る 。
それはライオットにしても同じだったようで。

「…冗談はその滑稽な股間だけにしておけよ。」

「ふっ…下品だな。これだから田舎の貧乏騎士は困るんだ~。これは宮廷で流行の優雅な帯剣作法さ~。」

えっ、マジで!?

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