2015年4月24日金曜日

32にゃん

このように。

無事子供が戻り、ロドリゲスと山賊達も捕まって牢にぶち込まれ、事件は解決した。
そのほとんどは人格崩壊しかかっていたが、若干名、何かに目覚めてしまっていたそうだ。

まあそれはさておき。

朝露亭のエルマ坊ちゃんも孤児達に混じっていたらしく、ご家族にお礼を言われた。
実はエルマ坊ちゃんはお友達だった孤児の女の子と遊んでいて捕まったらしい。
坊ちゃんは誘拐体験から成長し、大人達顔負けの説教をしたとか。
マリーシャの口添えもあり、街の大人達は反省して皆で孤児を育てる協力をする事が決まったそうだ。

ライオットは長時間逃げ回って体力が尽きたらしく、宿でダウン中。
うんうんうなされている為、スィルはその看病だ。
サミュエルは依頼達成の手続きに冒険者ギルドへ、その後は出発のための買い物へと出かけている。

私はと言えば。

マリーシャ、ティリオンと一緒に宿屋の中庭を借りてティータイム中。
酒場兼食堂スペースでは野次馬が煩いのである。
ティリオンはマリーシャに闇の神の教皇の事や、過激派について説明していた。
しかしその傍で――

"ふんっぬぬぬ――!!!"

先程から騒いでいるのは風の精霊王シルフィードである。


***


"はぁはぁ、風の精霊(あたしたち)の入る隙はないのー?ノームばっかズルイったらー!"

何がズルイのか、と言うと。

"地の精霊石だけじゃバランス悪いしー、あたし達も風の精霊石をニャンコにあげるのー!"

という事である。
しかし、鈴は既に闇の神と地の精霊の力で飽和状態、のようだ。
プンプンご立腹のシルフィードを眺めていると、ふいにマリーシャさんの視線を感じた。

「今、ティリオンさんから聞いたのですが――ニャンコ、闇の神の祝福というのはその鈴の事ですね。少し見せて貰えませんか?」

そう言って手を伸ばしてくる。

「にゃっ!?マリーシャしゃん、アンシェラしゃんは、わたち以外の人が触ると危ないって言ってたにゃ!」

私の慌てての制止も間に合わず、マリーシャが鈴に触れてしまう瞬間。
彼女の白魚のような手が眩く白い光が生み出し、鈴を包み込んだ。

「こ、これは…祈ってもいないのに、何故…?」

光は波動であるらしく、鈴がリィンリィン…と鳴りだす。

「凄まじい力の奔流――光の神か!?」

あまりの眩しさに目を細めているティリオン。
私もそんな気がしている…つーか、百パーそうだろう。

(ニャンコ=コネコに我が祝福を与えん。光と闇は拮抗し、秩序と混沌の中から至高の力が生まれるだろう。)

やっぱりイーラ様だった。
その言葉が脳裏に響いたかと思うと、フッ…と光が消えうせる。
イーラ様の言葉が聞こえていたのは私だけではなかったようで、ティリオンは呆然、マリーシャは祈りを捧げていた。
鈴は白と黒がぐるぐると混じりあって灰色になったかと思うと、黄金色に変化して燦然と輝きだした。
まるで仏様のような後光付きの、金の鈴という訳である。

"光の神イーラ、ありがたやー!これで入る隙ができたわー♪"

シルフィードの歓喜の声。
びゅうびゅうと私達を中心とした風が竜巻のように吹き荒れる。
風が収まった後。
鈴の、地の精霊石の丁度反対側にあたる部分に、緑色をした風の精霊石が一つ増えていた。
本当に良かったと思う。

にゅうにゅう(ぎゅうにゅう)臭いにゃー…。」

「……タオル、借りてきますね。」

「ああ…すまない。」

暴風がテーブルクロスごとひっくり返してくれたお陰で、全員ミルクやお茶を引っかぶってずぶ濡れであることを除けばね!



*おまけ*

「何てことをするのにゃっ、テーブルの上がしっちゃかめっちゃかじゃないかにゃっ!」

叱ると、シルフィードは悪びれず顔を両手で挟んでブー、としてみせた。

"だって嬉しかったんだもんー!仕方ないじゃない、そんなところでお茶してる方が悪いのよー!"

「だってじゃないにゃっ、わたちの好きなミルクとケーキがダメになっちゃったのにゃ!」

"あたしたちは悪くないもん!"

ほほう、ならばこちらにも考えがある。

「……精霊のしでかした罪は、その愛し子が償うべきだとは思わないかにゃ?」

"!!?――もっ、申し訳ないですー、ごめんなさいもうしませんー!"

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