2015年4月24日金曜日

12にゃん

「――という事があったのですよ」

「何てブッソウなのにゃ」

宿の一階にある酒場兼レストランにて。
私達はサミュエルからその話を聞かされた。

「孤児ばかりを狙ったもの…」

孤児を攫い、奴隷として奴隷商や娼館――果ては過酷な労働を強いられる鉱山などに売り飛ばす事は、王国の法律では禁じられているが、現実としてそれが100%守られた例は無い。
痛ましい表情のマリーシャ。攫われた孤児達の行く末を憂いているのだろう。
スィルは思案しているようだった。

「どちらにせよ、碌でもない目的なのは変わらないわね」

「他の、親の居る子供達は攫われなかったのですか?」

マリーシャがそう問いかけた時。

「あんた達ッ、茶髪に紫の瞳の、小さな男の子を見なかったかッ!?」

血相を変えた二人の男が宿に飛び込んできた。



***



酒場には結構お客さんが居て、突然の闖入者に騒然となる。
私は咄嗟にサミュエルに抱き上げられていた。
ライオットが腰をやや浮かせて右手が剣の柄に掛かっているのが見える。
孤児、誘拐、などという言葉がざわめきの中に聞こえた。

「親が居る子供にまで手が伸びた…という事は、子供そのものが必要…まさか、魔族か?」

サミュエルの呟きが耳朶を打つ。魔族――そんな種族がいるのだろう。
そして彼の口調からすると人間とはきっと敵対関係にある。
表に出ていた宿の女将さんが旦那さんを呼ぶ。厳つい男が厨房の奥から顔を出した。

「どうした!?――お前は朝露亭の」

「ドットンの旦那、エルマ坊ちゃんを見ませんでしたか?――ああ、どうしよう――エルマ坊ちゃん。おいらがちゃんと見ていれば」

「落ち着け――エルマ坊がどうしたんだ!?」

半泣きになった男に宿の主人が問いただしている間に、もう一人の男が酒場を見渡した。

「お食事中のところ、突然押しかけて大変申し訳ありません。私達は朝露亭の者です。皆様方の中に、茶髪に紫の瞳の男の子をご覧になられた方はいらっしゃいませんか?丁度――そちらの猫のお嬢さんぐらいの背丈の子です」

そちらの、で酒場の客の視線が一気に自分に集中した。恥ずかしさをぐっと耐える。
しかし酒場の客の中には心当たりのある者は居なかったようで、男は肩を落として落胆した。

「エルマ坊ちゃんは朝露亭のたった一人の跡取り息子なんです……」

「自警団には勿論届けているよな。ギルドには捜索依頼を出したのか?」

「ええ。出しましたし、情報提供もお願いしました。自警団の方も探してくださってはいますが、街の警備もありますし、割ける手は限られています。ギルドの依頼とて、すぐに受けて頂ける訳もなく……こうしている間にも坊ちゃんが危ない目に遭っているかと思うと」

客の一人の問いに力なく項垂れる朝霧亭の男達。
もし、エルマ坊ちゃんらしき子供を見かけたら宜しくお願いしますと言って出て行った。

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