2015年4月24日金曜日

15にゃん

場所は突き止めた。しかしこれをどうやって人々に伝えようか。
この町の人に犯人が誰か分かるように魔法をかける?
いや、ダメだ。犯人はどう見ても組織であり、山賊っぽかった。
却って混乱や危険を招きかねない。

一人部屋で悶々と悩む。
幼児が言う事などまともに取り上げてもらえないだろう。

ふと、彼らがなかなか部屋に戻ってこない事に気付く。
外を見ると、他の宿や家の明かりは消え、人々はすっかり寝静まっていた。

やけに遅すぎやしないだろうか。

にわかに心配と不安にかられ、私はベッドから降りて、ドアへ向かった。


***



廊下を歩き、階段の上に差し掛かる。
下を見ると、階下の酒場の一角だけ妙に明るい。
皆はそこに居て何かを話し込んでいる。
光の玉が空中に浮かんでそこだけを照らしていた。きっとサミュエルの魔術だろう。

私の足音に気付いたのか、皆がいっせいにこちらを見た。
こちらもじっと彼らを見詰め返す。

「どうしたの、ニャンコ。」

マリーシャの声に、我に返って階段を下りることにした。
しかし、宿の階段は上るのはいいが、下りるとなるとこの体ではかなり怖い。
私は横を向いて、階段の手すりの柵をつかみながら階段を一段一段慎重に降りようと――したところ、スィルがさっと上がってきて、抱っこして下ろしてくれた。

「ニャンコ、眠れなかったのかしら?」

皆のところまで連れてきてもらって、マリーシャの膝に座らされながらスィルが聞く。
私は何と答えたものかと言葉を探した。

「……起きちゃったのにゃ。そしたら、みんながいなくて、一人ぼっちで寂しくなったのにゃー。」

いや、そうじゃなくてまずは謝らなきゃいけない。
そう思いながらも気まずくて、目を合わせる勇気が無くて、一度俯く。
ややあって、勇気を振り絞って顔を上げた。

「……あの、ごめんなさいにゃ。何も出来ないクセに、みんなにワガママを言ってしまったにゃ。」

世の中には可哀想な事、悲惨な事は沢山ある。
見返りもなく、いちいち他人に同情して助けていてはキリが無い。彼らにだって生活があるのだから。
そんな事を思いながら己を恥じていると、ライオットが私の肩に手を置いた。
彼を見ると、真摯な色を宿したブルーの眼差しとかち合う。

「謝らなくてもいいんだ、ニャンコ。俺達はニャンコに教えられた。攫われた子供達を探す事にしたよ。」

「にゃ…でも、ライオットしゃんは」

「ニャンコの言う通りでした。私達だけでしたら他人事我関せずとさっさと次の街へ出発していたでしょう。でも、それではいけないと気付いたんです。」

「サミュエルしゃん…」

「そうよ。それに、このまま知らないふりして街を出たら、後味悪いもの。」

「スィルしゃん…」

頭を撫でられる感触。
後ろのマリーシャを振り返ると、慈愛の微笑み。

「ニャンコ、あなたの言葉があったからこそ、皆動き出したんですよ。ありがとう、ニャンコ。」

彼らがまぶしすぎる。
恥ずかしいやら申し訳ないやら嬉しいやら。
そんな感情が入り乱れて、私はもじもじとしてしまった。

あ、そうだ。
さっき考えていた事。

私は彼らを頼みにする事にした。

「……あの、マリーシャしゃん。」

光の神イーラ様、ごめんなさい。

「じつはさっき、光の神イーラしゃまの夢を見たのにゃ。イーラしゃまから、子供達を攫ったハンニンにシルシをつけるオマジナイを教えてもらったのにゃ。イッショウケンメイ、覚えたのにゃ。」

「犯人に印を付けるおまじない?」

私は頷く。

「イーラしゃまはそう言っていたにゃ。みんなが子供達を捜してくれるなら、みんなにハンニンが分かるオマジナイをするにゃ。」

四人は一瞬顔を見合わせ、微笑む。
ライオットがおどけて言った。

「じゃあ、頼む。俺達が無事に犯人を見つけられるように。」

私は姿勢を正して咳払いをする。
落ち着いて。慎重に文章を組み立てて、得られる効果を間違えないようにしなきゃ。

「じゃあ、いくにゃ。『エルマ坊ちゃん及び孤児達を誘拐した実行犯全員の頭上に【児童誘拐犯】と赤く光る文字が浮かんでいるのが、彼らが逮捕されるまでの間ずっと、ここに居る五人の目に見えるようになる』…にゃ。」

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