2015年4月24日金曜日

38にゃん

「……先程は雇い主が失礼致しました。」

スカーレットさんがライオット達に優雅に一礼する。

「雇い主?」

「はい。私達は、正確にはあの方のお父上との雇用契約を結んでおります。」

「成る程、そういう事ですか。」

サミュエルが納得したように呟く。
問題児である息子の面倒を見るために雇われた――他の皆も同じ事を思ったのだろう、疑問が解けたような表情になった。

「せめて、お詫びと申しては何ですが…もし宜しければ、ダンスを楽しまれている間、私がこのお嬢様のお相手をさせて頂きたいのですが…。勿論、皆様の目の届く場所にいる事はお約束致します。」

冒険者達は顔を見合わせる。
スィルとマリーシャの表情には、少し心配が残っているようだった。

「お言葉に甘えてはどうでしょうか?私もおりますし。」

マニュエル様が助け舟を出した。
ちらり、とスカーレットさんを見上げる。

"俺もニャンコと話してみたいんだけどな!"

サラマンダーの言葉。スカーレットさんの琥珀の瞳と視線が交わりあう。
何だろう、彼女は私と話したがってるのかな?
ひとまずお誘いに乗ってみる事にする。

「わたち、お姉しゃんと一緒にいい子にして待ってるにゃっ!踊ってきて欲しいにゃっ!」

私の言葉に、彼らは分かった、と言ってようやくダンスの輪に混じるべく動き出した。
その時を見計らって、給仕の人が私への食事を持ってきてくれた。
受け取って彼にお礼を言ってから、私達はマニュエル様からよく見える、あまり人が居ない食事スペースへ移動した。
マニュエル様は私達が腰を下ろしたのを見ると、安心したように他の客の応対をし始める。

「……さて、これでゆっくりお話が出来るわね。」

"ニャンコについててって愛し子に言われちゃったー!"

シルフィードが飛んできた。
スカーレットさんは「どうぞご自由に――あのエルフの女性は風の愛し子だったのね。」とシルフィードに会釈してみせる。

"そう言ってくれると助かるわー。ところで、火の愛し子は魔族って聞いてたけどー、何で人間の国にいるのー?"

風の精霊王によって、特大級の爆弾が落とされた。


***


「にゃっ!?マゾク?」

私は思わず飛び上がった。
魔族って、人間と敵対してるという、あの?

「ええ、彼女の言うとおり私は魔族よ。今は人間に化けているの。」

"本当の姿は牙と角があるけどな。"

でも、外見的には人間と変わらない…?
マジマジと見詰めたら、彼女らはそう説明した。

「人間の国にいるのは、ちょっと探し物をしているの。」

「何を探しているのにゃ?」

"――ドラゴンだ。魔族が管理しているドラゴンが一匹居なくなっちまったんだ。ある日、突然に。"

「力の強すぎる生き物だから慣らして飼育管理しているの。魔族領はほうぼう探したわ。だけど居なかった――目撃情報さえなかったの。まさかと思って火の精霊(このこたち)の力を借りたら、ドラゴンを手に入れたという人間を見つけてね。それが――」

"あの馬鹿男の親父だったって訳だ。"

なんと!

「…それで私達は人間に身をやつしてこの国に来たんだけど、ギュンター公爵は警戒心が強くてね。だから、信頼を得るためにまずその息子に近づいたの。ご子息を危険から守りますって言ってね。
碌でもない男だけど、父親の信頼を得るためには利用できる。ただ、ずっと皆無表情でいたのは、そうしないとあのクズ男に対する殺意を我慢できないからよっ!」

「そういう事だったのにゃー…」

説明している内に、ヒートアップしていくスカーレットさん。
相当フラストレーション溜まっていたんだね…。

私は彼女の肩をポンと叩いて労わってあげた。

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