2015年4月24日金曜日

19にゃん

結論から言おう。置いていかれた。

危険だからニャンコは宿に居てね、宿から一歩も出ちゃダメよ、との事だった。
彼ら不在の間、宿のご主人夫婦が責任を持って私の面倒を見るそうだ。
悪いけど、ここで大人しく待ってなんかいられない。

私はトイレにいくフリをして勝手口から外に出ようとした。
が、宿屋から出れない。何か空気膜のようなものにふにゃんと押し返される。
何故だ?他の客は出入り出来ているのに。
結局理由が分からず、諦めて部屋に戻った。

「出れなくても様子は見れるにゃ。『スィルとマリーシャの様子を知りたい』にゃ。」

私の目に、馬に乗って野を行くスィルとマリーシャの姿が映画を見ているように映った。

スィルが馬を操り、マリーシャがその後ろに乗って駆けていく。
マリーシャの口が動き、声が聞こえた。

――スィル、本当にニャンコは大丈夫でしょうか?

――余程の事が無い限り、大丈夫だと思うわ。宿屋からニャンコを出さないように風の精霊に頼んだもの!

「……」

私は一旦魔法を切った。
成る程、宿から出れないのはスィルの所為か。
つまり、風の精霊とやらをどうにかせねばなるまい。

「『風の精霊…』にゃ」

風の精霊に向かって呼ばわってみる。
と、部屋中の空気が音も無く震えたのを感じた。


***


"呼んだ?"
"きゃあ、ニャンコが呼んでくれた♪"
"神々の愛猫、何か用か?"
"精霊の愛猫でもあるんじゃない?私達もニャンコ大好きだもん♪"


な  ん  か  出  て  き  た  。

わらわら、わらわらと雨後のたけのこのように。
部屋中があっという間に沢山の風の精霊達で埋め尽くされた。

つーか、風の精霊ってこんなに居るもんなの?
スィルが昼間呼んだ時は精々十数ぐらいしか見えなかったけど!?

ドン引く私。
と、目の前に一回り大きな個体がホバリングしている。

"うふふ、初めましてニャンコ♪あたしはシルフィード、風の精霊王よ!精霊の中では風の精霊が一番乗りでニャンコとおともだちっ、凄く嬉しいわー♪みんなで喜びの舞いを、せーのっ!"

呆ける私を他所に、目の前でシルフィードと名乗った精霊はくるくるとバレリーナのように舞いだした。
それと呼応するかのように周囲の妖精達は手を繋ぎ、マイムマイムっぽい踊りの輪になって私を十重二十重に囲んでいく。



"ニャンコにゃん♪ニャンコにゃん♪にゃんにゃんニャンコにゃん♪ニャンコにゃん♪ニャンコにゃん♪にゃんにゃんニャンコにゃん♪…"



延々と続くダンス。
私が我に返って抗議の絶叫を上げたのは、その数分後だった。

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